チベット死者の書 The Tibetan Book of the Dead は、バルド・トドゥル Bardo Thodol といわれる経典で、紀元8、9世紀にインドの僧パドマサムバヴァがあらわしたものとされています。この経典は、埋蔵経(テルマ)といわれ、長い間山中の洞窟などに隠されていて、それが必要とされるときに発見される、といわれています。
チベット死者の書の場合は、東洋学の中心だったオックスフォード大学で学ぶ、1878年アメリカ生まれのエバンス・ヴェンツ Evans Wentz によって発見されました。彼は、ダージリンの下町のバザールで、チベット語もわからないまま、たくさんの書物を買い込みました。その中には、いくつもの重要な経典が含まれていて、その一冊に「バルド・トドゥル チベット死者の書」がありました。
バルド・トドゥルはチベット語で、バルドは、中間の状態をあらわし、トドゥルは、耳で聞いて解脱する、という意味です。つまり、この経典は、これから死んでいく人に聞かせるお経です。死の直後から耳元で語りはじめて、49日間にわたり延々と語り聞かせる物語です。
日本とは違ってチベットでは、輪廻を信じているために、死を怖いものとは思っていないし、死がすべての終わりとは考えません。人は死ぬと「バルド」という状態に入って、生と死を繰り返す大きな旅の途中なのだ、と考えます。そして49日の意味は、どんな死者もこの間には輪廻して生まれ変わる、というタイムリミットの日をさしています。
人は死ぬと必ず輪廻して生まれ変わるので、お墓は必要ないと考えられています。身につける服と同じで、古くなったら服を捨て、また新しい肉体を持つ、という感覚で、意識が抜けてしまった遺体や遺骨などにも、特別な感情はない、という考えですね。
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●過去記事 「インド占星術と生まれ変わり 2014/11/12」
「インド占星術と生まれ変わり2 2014/11/17」
「インド占星術と生まれ変わり3 2015/01/05」
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